五竜岳挑戦

 20217月、後立山連峰の中でも武田菱の雪形でひときわ存在感を放つ名峰、五竜岳。登山を趣味とするものなら一度は行ってみたいと思う憧れの山へ、この度挑戦する機会を得ました。

 市内では35度を記録する猛暑の中、山の上なら涼しいか?と思いきや、いやいや全く遜色のない暑さ。そして、照りつける日差しを遮るものは何もない尾根の道、しかも無風と言うコンディションの中で体力がどんどん奪われていきます。しかし、登山道の脇に残っている雪渓がまさに天の恵みでした。ここぞとばかりに寝転がり体を冷やします。ウエアを伝って感じる雪の感触は驚くほど冷たく、ビニール袋に入れて口を縛れは簡易氷嚢の出来上がり。これで首や頭を冷やします。日頃雪に親しんでいる自分でも、こんな使い方をするとは夢にも思いませんでした。ここで急速冷却を果たし英気充満、6時間あまりかけて初日の目的地、五竜山荘に到着。オレンジ色に染まった富山湾に沈む夕日を眺めながらビールで乾杯し一日の疲れをいやす、至福のひと時です。

 翌日は山小屋の前でご来光を拝んだら、いよいよ山頂アタックです。山頂直下は鎖場が連続する高難易度のコース。集中力を高め三点支持の原則を守りながら慎重に登攀します。霧に包まれたコンディションだったためか高度感が薄れ、恐怖心を感じることなく無事登頂を果たしました。しかし、登攀中は有難かった濃霧も山頂では眺望を隠し、撮った写真はバックが真っ白で、まるで合成写真のように。「ここはいったいどこ?本当に憧れの五竜岳山頂?」と言うのが正直な気持ちでした。

 しばらく待っても霧が晴れないようなので、後ろ髪を引かれる思いで下山に途に就きました。前日通ったコースをたどる道中は、「早く麓の温泉に入りたい」という切望と、「ああ、これで終わってしまうのか」という寂寥感が交互に押し寄せる、何とも複雑な心境。

 そんな思いを感じながら7時間かけて無事下山を果たし、この夏の大いなる挑戦は静かに幕を閉じました。

 

f:id:Hiroshi-Obinata:20210901080423j:plain

f:id:Hiroshi-Obinata:20210901080518j:plain

f:id:Hiroshi-Obinata:20210901080549j:plain

f:id:Hiroshi-Obinata:20210901080705j:plain