永平寺座禅体験

20213月、永平寺へ行き座禅体験をしてきましたので、その様子をレポートします。

 

 冷たい雨の降りしきる、早春の永平寺。お昼過ぎに到着するとロビーで受付を済ませ、参加者の証であるリボンを受け取りました。指定された集合時間になると集まった今回の参加者は、中学生からシルバー世代まで総勢1415人程度でしょうか。早速、担当の雲水さんの案内で2列に並び会場へ移動するのですが、何かもう、この時点ですでに不思議な緊張感が参加者の間から漂い、「何が始まるのだろう?」「痛くないかな?」という参加者の心のつぶやきが聞こえてくるようです。

 会場の大広間に入ると、各自用意された「座蒲(座禅用の座布団)」の前に立ちいよいよ座禅が始まります。雲水さんの言葉通り結跏趺坐の姿勢を取るのですが、早速ここでつまづきます。「この脚の形、絶対無理でしょー」って。しかしそこは優しい雲水さん、出来ない方はこれでもよいですよ、と別の組み方を。

 さて、この説明で今回新しく知ったことは、「警策(バシバシ棒)」は、自らの意思でも受けることができるということ。自分で「ちょっと集中出来ていないな」と感じた時は、自分から乞うてバシバシしてもらうことで、気持ちをシャキッっとさせることができるようなのです。「おー、これは是非バシバシしてもらいたい」と期待したのですが、今回はコロナ感染防止のため実施しないとの事。うーん、これは残念でした。

…それにしても、進んでバシバシしてもらいたい僕って、もしかしてマゾなのだろうか?

 各自準備も整い広間の照明も暗く落とされ、いよいよ銅鑼の合図で座禅が始まりました。半眼にて畳の一点を見つめながら、手は法界定印を組み、呼吸に意識を集中する。初めのうちは、「周りの人はどんな様子かな?」「今夜の夕食楽しみだな」等々色々なことが頭をよぎるのですが、その都度、「あっ、いけない!」と呼吸に意識を戻し、スーハースーハーと息をする。呼吸に集中、考えや思索が頭をよぎる、また呼吸に意識を戻す、ただひたすらとこの繰り返しです。やってみるとこれが結構難しく、すぐに考えがあっちに行ったりこっちに行ったり。

 しかし、しばらくすると…、おやっ?いつのまにか聞こえていた雨音もいつしか耳に入らなくなり、周りの人の存在も感じられなくなり、ただ聞こえるのは自分の呼吸音のみという感じになってきました。何というか、呼吸と身体が調和するような感覚?身体全体が呼吸するための存在になる?そんなイメージでしょうか。心と身体がしっくりしてくるのです。そして、ずっとこのままでいたいって。

 そうこうしているうちに、銅鑼の音で座禅も終了。結跏趺坐を解き、ゆっくりと体をほぐしながら意識を通常にもっていくのですが…おぉ、いったい何なのでしょうか!このすっきりとした心持ちは。5月の新緑の森の中にいるような、波の静かな湖畔に佇んでいるような、そして何かで心が満たされたように感じる、全くもって穏やかで平穏で不思議な心のありようです。

 座っていた時間は賞味3040分程度でしたが、そんなに長く座っていたとは思えないほど、あっという間に過ぎていった初の座禅体験でした。

 

 今回の体験で何を得、何が変わったのか正直分かりませんが、「家に帰っても続けてみよう」そんな気持ちを胸に抱きながら永平寺を後にしました。

 

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